三重県名張市赤目町丈六
令和3年(2021)4月
修理前
丈六寺本堂前の参道に立つ五輪塔は正応4年(1291)の紀年銘を有し、伊賀地方で銘文のある五輪塔では最古です。水輪や火輪に大きな欠損が見られ、また各部材本来の方向性を失っていました。丈六寺と市教委の依頼に基づき、山川がその解体修理(指導・設計)を担当しました。


解体


解体作業は部材の損傷を防ぐため、全体をサラシで巻いて養生し、クレーンにより部材を持ち上げて石塔を解体しました。地輪の下の切石組基壇は5石から成り、外側と上面を平滑に調整した上で組み合わされていました。

オルソ画像の記録
欠損部はオルソ画像を作成し、復元部分の形状やサイズを決定後、同質の石材で補填し、またバラバラだった各部材の方向性は、五輪塔本来の方向性に戻しました。

組上げ
大きな欠損部分を同質の石材で補ったことによって、五輪塔は本来の重量バランスも取り戻し、非常に安定した姿となりました。また、地下調査によって当初の台座は近世以降に補われたものであることが明らかとなったので、上記の長岳寺五輪塔の反花座をモデルに、新たに大和型の反花座を作成しました。


修理後
もとより丈六寺五輪塔は長岳寺五輪塔と同じ大和型五輪塔なので、この反花座を付加したことにより、塔は自然な形で荘厳性を増したものといえます。

